【声明】障害年金判定に係る問題について
2025年05月09日 [要望・見解など]
NPO法人 東京都自閉症協会(理事長 杉山雅治)
障害年金の不支給判定が2024年度は2倍以上に急増しており、 日本年金機構が恣意的に支給を抑制している可能性が報道されました。
障害年金は、知的障害を伴う自閉スペクトラム症を持つ人にとって生活の礎になるだけでなく、知的障害を伴わない自閉スペクトラム症や発達障害の人にとっても重要なセーフティネットであり、幸福に暮らすための権利です。自閉スペクトラム症の中には、社会への不適応からうつ病などの二次障害を併発したり、ひきこもりになったりする人も少なくありません。年金を受給しながら無理ない働き方を調整したり、生活を立て直したり、自分のペースで社会にコミットしたり、その人らしい暮らしを組み立てていくことができます。「年金がもらえないかも」「更新できないかも」という不安は、精神的なストレスを受けやすい自閉スペクトラム症の人たちを、さらに苦しめ追い詰めます。
今回の報道が事実であれば、社会福祉の根幹を揺るがす問題であると共に、日本年金機構は自閉スペクトラム症や発達障害についての理解が乏しいと言わざるを得ず、とても看過できません。
- 今回の報道を受け5月7日の厚生労働委員会で福岡厚生労働大臣が日本年金機構に抽出調査を指示したとのことですが、調査データの解析はもちろん、恣意的に支給を抑制した事実があったのかどうかについても、ヒヤリング調査等を行い、公表することを強く求めます。
- 以前より指摘されていましたが、今回の件で現在の障害年金の課題が、より明らかになりました。現状の課題整理や再発防止にむけて、自閉スペクトラム症や発達障害の専門医、社労士、当事者団体などをメンバーに入れた第三者委員会の設置をお願いします。
- とくに現行の審査方法では、知的障害・精神障害・発達障害への、公平な支給決定が困難です。障害区分認定や介護認定を参考にし、速やかに、生活や社会参加の状況をできるだけ客観的に判断できる透明性および公平性が高い審査方法に移行することを望みます。
私たちは、自閉スペクトラム症や発達障害の人たちが、安心して自分らしく暮らせる世の中の実現をめざし、活動しています。今回の報道が、現行の障害年金の課題を社会全体で認識し、改革を行うきっかけになることを望んでいます。
以上